| 今西: |
バンダイ静岡工場が新しい大きな工場に移転するということで、その前に見せてもらえればと思って来てみました。入り口の製品サンプルが並んだショーケースを見てもたくさんのプラモデルが並んでいて歴史を感じますね。バンダイさんの工場は、ずっとここなんですか? |
| 岸山: |
元々は、今井科学という模型メーカーの工場だったのですが、今井科学が倒産してしまったので、その工場を買い取ってバンダイ模型としたのがここの始まりです。確か今井科学は1969年頃に倒産していますから、35年以上の歴史があるわけですね。 |
| 今西: |
すごい歴史があるんですね。そういう意味では、名残惜しいですね。以前ここに訪れたのは、確か『ガンダムイボルブ4』の頃ですよね。そこで、開発中のHGUCのデンドロビウムを見せてもらって、作品の打ち合わせをしたのを覚えているんですが。 |
| 岸山: |
そうです。ウェポンコンテナのギミックの試作を見せて、機構などの話をして。その後、より完成形に近い試作をいろいろとチェックしてもらいましたね。 |
| 今西: |
こんな大きなアイテムがプラモデルになってしまったわけですが、元々『機動戦士ガンダム0083』のプラモデルシリーズが展開される予定ってあったんですか? OVA制作時に、こちらはそうした商品展開に関与していなかったので詳しく知らないんですが。 |
| 岸山: |
当時で言えば、劇場版の『機動戦士ガンダムF91』のシリーズを主軸に置いて商品開発をしていました。ガンダム関連の作品が2媒体同時に動いたのも初めてでしたし、我々としては「歴史の新しいものに力を入れよう」という雰囲気もあったので、メインは『F91』になりましたね。今は、HGUCやMGといういくつかのシリーズを同時に動かすことができますが、当時は無理でしたね。そこで、『機動戦士ガンダム0083』は、ガンダム試作1号機(以下、GP01)と試作2号機(以下、GP02)という、決して多いとは言えないラインナップでのスタートとなりました。ただOVAということで、ソフトの展開期間が長かったことも、模型の商品展開としては都合がよかったですね。今の模型開発ではほとんどないんですが、当時は設定にいかに忠実に再現できるかが重要で、デザインを担当された河森正治さんの設定画に重きを置いていましたね。 |
| 井上: |
あの当時、すでにガンプラは多色成形が盛んな時期だったのに、箱を開けたら色数が少なかったのが印象深いですね。 |
| 岸山: |
そうですね。白と青の成形色で構成されていて、赤や黄色がなかったですからね。 |
| 井上: |
「どうして、多色成形じゃないの?」って聞いたら、「『0083』はコアなファンが多いと思うので、色を塗りやすいように余計な色を入れていません」って。うまいこと言うな〜と(笑)。 |
| 岸山: |
よく覚えていますね(笑)。でも、そんなGP01とGP02ですが、初年度は30万個を売り上げるヒット商品になったんですよ。それだけ作品も愛されていたということですよね。そういった反響の良さと、劇場版として再編集された『機動戦士ガンダム0083 ジオンの残光』の公開にタイミングを合わせる形で『0083』関連アイテムの拡充を図ることができたんです。そこで、GP01のフルバーニアン、ガーベラ、ステイメンの3アイテムが追加されて、商品仕様的にもグレードアップがされましたね。 |
| 井上: |
多色成形になって、プラモデルとしての完成度もかなり高くなりましたよね。 |
| 岸山: |
そうですね。その後、ご存じだと思いますがマスターグレード(以下、MG)シリーズが今から約10年ほど前にスタートしまして。これは、みなさんの心の中にイメージに合わせる形でガンダムのプラモデルを見直すということで始まったシリーズだったので、過去の商品でフラストレーションが高いものが初期の商品化ラインナップに登ることが多くて、『0083』関連のモビルスーツもそこに含まれていたわけです。商品化のデザインワークスという形でカトキハジメさんも加わっていたので、GP01ならば地上用と宇宙用の換装という機能をいかに成立させるかを検討しながら商品化を進めていったわけですね。そこで、映像用の資料をじっくり見るほど理屈にかなってよく考えてデザインされていて、そのこだわりを噛みしめながら商品開発をしたのを覚えていますね。アニメ用には描かれていない部分の解釈に関してもカトキさんに協力してもらうことで、さらに商品としての完成度を高めることもできたのも良かったです。 |
| 今西: |
カトキさんがプラモデル用に描き下ろす画稿というのは、1体あたりどれぐらいになるんですか? |
| 岸山: |
物によって違いますが、例えばMGクラスであれば基本となる前後の立ち姿に始まって、内部フレームの形や各部のディテールなんかを含めると1アイテムあたり20カット近くにもなりますね。さらに、複雑な変形機構などがあるとさらに10カット前後増えることもありますし。アニメの設定では不明な部分に、どう理屈付けするかがカトキさんの得意なところで、MGもそういった要素が加わって商品レベルが上がっていったんです。 |
| 井上: |
そうした流れが、この大きなデンドロビウムにつながっていくわけですね。やっぱり、これはOVA制作当時ではあり得ないアイテムだったんですよね。 |
| 岸山: |
もちろん(笑)。当時は、本当に驚きましたよ。設定が上がってFAXが送られてくるたびにどんどん大きくなっていって……。こちらサイドとしては、小さくして欲しかったんですけど(笑)。 |
| 今西: |
プラモデルになるなんて思ってもいなかったですからね(笑)。 |
| 井上: |
設定を考えている時に「プラモデルにできないモノを作ってやる」ってハッキリ言ったじゃないですか(笑)。 |
| 今西: |
そんなこと言ったっけ?(笑) |
| 井上: |
真ん中のガンダムはプラモデルになるかもしれないけど、周りも作ろうと思ったら大変なことだろうなと思いましたね。でも、実際に商品になっているわけですから。ある意味、設定も商品も常識を越えたものですよね。 |
| 岸山: |
当時から、モビルアーマーをプラモデル化する際の1/550スケールでの展開は考えていて、ホビーショーではそのスケールに合わせた試作品を展示していたんですよ。ただ、実際にどれだけ売れるのか判らなかったので、OVA展開中には商品化することができなかったんです。でも、その後MGがあり、それを受けて1/144スケールのガンプラをリニューアルするHGUCというリーズナブルな価格でプラモデルを楽しめるシリーズも始まり、そのモビルアーマー版という形でやっと1/550スケールのデンドロビウムを発売することができたんです。
MGでGP01やGP02を商品化した時に判ったことなんですが、『0083』のモビルスーツというのは、他のシリーズに比べて非常にメカを愛するファンからの支持が高くて、立体化の要望の声も大きかった。そういう人たちの究極の願いというのが、デンドロビウムの立体化だったんです。
それは、1/550スケールで、ノイエ・ジールも合わせて発売されることで立体化に関するフラストレーションは少しだけ解消されて、評価も受けました。そうした流れの中からHGUCでステイメンの商品化の順番が回ってきまして、そこでホビー事業部としてもHGUCの持つ可能性を見せたいという思いもあったんです。MS
IN ACTION!では、ビグザムが商品化されたりして、次にどんな大型アイテムが出るのかお客さんが夢を膨らませていた風潮があって、ホビー事業部としてもそこにどんなアイテムを提示するか模索している時期だったので、タイミング的に1/144スケールでのデンドロビウムの商品化にはうってつけだったんです。こうした流れで、「プラモデル化できない」と提示された壁を越えることはできたんですけどね。 |
| 今西: |
こうして、OVA製作後数年経って立体化されたプラモデルを見ると、今度はこれを借りて逆にCG化することでいろいろと見せてみたいと思ったりしちゃうね。プラモにできないCGを目指して(笑)。 |
| 井上: |
また、挑戦? まあ、ホビー事業部的にもいろんなことに挑戦したほうが技術的にもいいんでしょうけど。 |
| 岸山: |
そうですね。まさに「こんなものができるワケないじゃん」とか「これができたらスゴイよね」というところは、ユーザーにとっても価値観が発生するポイントですからね。 |
| 今西: |
ということで、今度新しい工場に移ると、やれることはいろいろと広がって行くんですか? |
| 岸山: |
どうなんでしょうね? 設備や人材が大きく変わるわけではないので、何とも言えないですが。 |
| 井上: |
例えば、より大きな商品の開発ができるようになるとか? |
| 岸山: |
……って、どういうことですか? |
| 井上: |
だって、このデンドロビウムはHGUCでしょ? MGでもステイメンが出てるんだから(笑)。新工場で大きくなるわけですし、どうです、この際。 |
| 岸山: |
ま〜た何か言ってるよ(笑)。よかった、パーフェクトグレードはGP01しか出してなくて!(笑) |